ナムディン農業高校・神田ブログ・Trường Trung Cấp Nông Nghiệp Nam Định Kanda Blog

ベトナム・ナムディン農業高校が2021年9月に開校されました。この高校は、農業教育をとおしてベトナムと日本の友好をめざすものです。そして、持続可能な自然循環の社会を農業をとおして実現しようとするものです。常に、人類的未来社会への大志をもって、日々の教育実践をブログにアップします。

ホーチミンの独立思想と有徳精神

ホーチミンの独立思想と有徳精神

 ホーチミンは、儒学者である家に1890年生まれ、生涯ベトナムの独立と自由、民主主義に捧げたベトナム国家の指導者である。ホーチミンは、1945年9月2日ハノイのバーディン広場で50万人以上のベトナム市民が集結するなかで、独立宣言を読み上げた。
 しかし、ベトナム人は、その後、この独立の宣言にもかかわらず、フランスからの独立戦争アメリカとの独立戦争・経済封鎖という極めて困難な道を歩まなければならなかった。

 ベトナムの独立宣言は、1776年のアメリカの独立宣言の精神であるいかなる民族も平等で生きる権利、幸福の権利と自由の権利をもっていること、フランス革命の人は生まれながらにして自由平等と博愛の精神をもつ権利があるということで、ベトナムに、その政治社会経済制度と精神を築いていこうと全国民にホーチミンがよびかけたものである。ベトナムの独立と自由の精神は、アメリカの独立宣言、フランス革命の思想から学んだのである。

 ベトナムは長いフランスの植民地政策によって、民族的文化が奪われ、愚民政策を押しつけられた。ベトナムの独立にとって教育は、大きな課題であった。ホーチミンは、独立宣言をした1945年の9月20日に、「老人は黙って静かに暮らしているいるべきか」と年をとった人びとによせる手紙を書いている。

 「われわれはもう年をとっている。われわれはもう何の野望もないのだ。現代の問題をひきうけるのは、われわれの子どもたちがいちばんふさわしい。われわれは死に近づきつつあり、もうわれわれが積極的である必要はないんだ」という考えに、愛国者は、年をとったからといって決して怠けるものではありません。独立と自由はいまいまかちとられたばかりです。われわれは多くの困難を切り抜けなければなりません。老いも若きも同じように責務を双肩に負って努力しなければなりません。私たちの子どもは若いし、大きな仕事をやりぬくでしょう。年をとったわれわれは大きな仕事をすることはできません。しかし、杖にすがりながらも、率先してかれらをはげまし、自分の経験をかれらにわけてやりましょう。わたしたちは年長者なのですから、子どもたちに模範を示すために、まず心から団結しなければなりません」。

 ベトナムの独立と自由のために老人も大きな役割を果たすことができるとしている。老人は豊富な人生経験をもち、愛国的精神をもって若い人をはげまし、自分の経験を若者にわけてあげるべきとしている。 独立宣言は、フランス植民地主義者との厳しい戦いを強いられた。家屋と財産を犠牲にして疎開をしなければならない事態も作りだされたが、1947年2月17日に、困難の中で生きていかざるをえない国民に、愛情をこめて、幸福を気づかっているホーチミンの言葉がうかがえる。疎開した同朋の食物、宿舎、仕事を保障しなければならず、誰も怠けることはできない。

 資本をもっている同朋は、一緒に小企業を組織し、苦労している疎開者を助けることをしなければなりません。疎開している人も自分たちの職業を続けなければなりません。ひとたび仕事をもったからには、勤勉に働き、経済にはげまなければならない。独立が達成されたときは、わたしたちはともに幸福を喜びあいましょう。

 ホーチミンは、1947年3月1日に公務についている同志諸君への手紙として「われわれが排除すべきくつかのこと」と有徳の確立の重要性を強調している。
 今や我が国は死ぬか生きるか、滅亡するか生存するかの岐路に立っている。ですから各同志ならびに全組織は、祖国に統一と独立のためにすべての心と力をささげなければならない。各同志はならびに全組織は、明敏で賢く、用心ぶかく、決断力をもち、勤勉に、そして、心を一つにしなければなりません。地方根性、派閥主義軍国主義と官僚制度、狭量さ、形式主義、机上の仕事、不規律・弛緩、利己主義・不道徳を排除しなければならない課題としてあげている。

  地方根性の一例として、自分の地方には、できるだけたくさんの幹部や資材おにぎっていて、より高級の機関が必要なところへ幹部や資材を動かそうとしても、それに応じないということ。
 派閥主義は、自分が懇意にしている人たちにたいしては、その人たちがまちがっていても、そのいうことを聞き、その人たちに何の能力もないときでさえ、かれを用いるということ。天賦の才能があっても、自分と意見の一致しない人びとをふり捨て、いかに正しくとも、その人たちの意見に耳を傾けることを拒否するということ。

 軍国主義官僚主義は、一地方を預かっている小さな王様のようにふるまうこと。尊大であり、高圧的であること。自分よりすぐれた人を軽視し、権威者を悪くいい、自分の部下に重くのしかかること。傲慢な態度で人びとをおどすこと。この専横な精神的態度は、多くの反感やあつれきをもたらし、高級機関と下級機関の間や、組織と人民との間にさけ目を掘ってしまう。 狭量さは、だれでも長所と短所をもっている。長所を利用し、欠点を正すように助力しなければならない。狭量な人は、友人が少ないという結果になり、他人から少しの援助しか受けられない。

 利己主義・不道徳は、公の財産を自分自身のものにし、権威や仕事を乱用して、取引ひで金持ちになることに没頭し、公務よりも個人の仕事の方を重く、考えたりする。 わたしたちはみな、慎みぶかくなければなりません。わたしたがベテランであり、有能であればあるほど、わたしたちの慎みぶかさは、大きくなければなりません。わたしたちは、進歩にたいする熱望をもち、心の中にわたしたちの師のことばを、つねに保持していなければなりません。「学ぶこと、学ぶこと、そして、学ぶこと」。うのぼれと自己陶酔は、ただわたしたちの進歩を妨げるだけでしょう。

 皆さんは一般に、我慢強さ、厳密さ、縦横な機略、進取の気性というような、多くの性質をもっているが、これらは、他の道徳を発展させるための基礎として役立つ、非常に貴重な性質であるが、大きな困難お重大な仕事をもつこの時期においては、これらの性質では不十分であり、この立派な基礎を、いままであげた欠点を決然として正すために利用しさえすれば、わたしたは完全に成功することになるであろう。ホーチミン・坂本徳松他訳「解放の思想」日本語訳1966年絶版、143頁~150頁参照。

 以上はホーチミンが公務にたずさわる北ベトナムの同志への1947年3月の手紙のなかでのベトナムの独立と自由を勝ち取っていくための「われわれが排除すべき不道徳なこと」 の克服の重要性を強調している。ホーチミンの解放思想は、地方根性、派閥主義軍国主義官僚主義、利己主義、拝金主義を克服していくことが必要なのである。つまり、有徳を確立していくことは、極めて大切な課題としている
 ベトナムは、独立宣言後9年間、フランスの再侵略に対して、独立を勝ち取った。1954年のジュネーブ協定によって1956年7月に総選挙が実施されることになった。しかし、現実は、そうならなかった。アメリカとの戦いがはじまるのである。1955年8月31日に軍隊英雄に対する講話をホーチミンはしている。

 そこでは、おごりたかぶってはいけない、たえず進歩のために努力することの必要性を指摘している。英雄は個人的成果としではなく、集団的な成果として、革命的道徳をみがくことを強調しているのである。

「英雄のみなさんは、みな傑出した成果をあげ、すぐれた革命的道徳を身につけている。このことは、けしてこのぐらいで十分だと考えたり、おごりたかぶったりしてはならない。たえず進歩するために、たえず努力しなければならない。・・・・・英雄のみなさんは、つぎのことをよく理解する必要がある。みなさんの栄誉はきわめて大きく、みなさんの任務はきわめて重大である。みなさんは、つねに努力し、たえず進歩しなければならない。仲間たちにたいして謙虚に、よく親しみ、あらゆる面で模範とならねばならない。

 政治、専門技術、文化教養の学習に努力しなければならない。革命道徳をみがき、つねに批判と自己批判を行わなければならない。けっして、おごりたかぶったり、自分はもうたいしたものだと考えたりしてはならない。つぎのことを、つねにおぼえておかなければならない。成果は集団の成果であり、英雄は集団の英雄であって、個人的な成果、個人的な英雄ではないのである。これは全軍の共通の栄誉であって、個人の栄誉ではない。要するに、わが民族が英雄的な民族であり、わが軍が英雄的な軍隊であるからこそ、軍隊の、そして民族の競争英雄が生まれるのである」。ホーチミン・加茂徳治他訳「わが民族は英雄」58頁~61頁参照・絶版



 ホーチミンは英雄をたたえるとともにおごりたかぶってはいけいない、たえず政治、専門技術、文化教養の学習と自己のあてえられた仕事に努力することを求めているのである。批判と自己批判を大切にして、革命的道徳を高めていくことを強調しているのである。現在、ベトナムは急速に経済発展をしている国である。あらためてホーチミンの解放思想を今、真剣に考える時期ではないか。
 ベトナム民族の英雄的な歴史をふまえながら、日本とベトナムの友好発展を経済交流をとおして果たしていく時期ではないかと考える。日本という国は、現在、政治、経済、文化、教育とあらゆる面で大変な状況におかれている。東日本大震災や国際的な金融不安、円高とそれにおいうちをかけているが、ベトナムの独立と自由、民主主義をかちとってきたホーチミンの解放思想からも学ぶべきことがたくさんある。